2015年12月1日火曜日

マーケティングのちょっとしたコツ

供給過多な市場での戦い方(9)




  こんにちは。前回、お客さんを吸い寄せるためには、ポジショニングの法則の次の3つのステップで成功することが必要だと申しました。

1 ハートシェアでナンバーワンになる
2 マインドシェアでナンバーワンになる
3 マーケットシェアでナンバーワンになる

これらの3つのステップに成功すれば、顧客から市場で「○○を買うなら、○○」と思われるようになり、特別なプロモーションをしなくても顧客が自社に吸い寄せられるようになります。

そのようなポジショニングの成功事例として最も有名な話は、おそらく、ホンダがアメリカのオートバイ市場で爆発的な成功を収めた時の話だと思いますので、今回から、そのホンダの成功事例に沿って、ポジショニングの法則の3つのステップについて説明します。

1959年に、ホンダはアメリカのオートバイ市場に参入しました。

しかし、当時のアメリカでは、既に交通手段は車が中心となり、オートバイ市場は、レジャーやレースなど、一部の限られた人たちの乗り物として、年間わずか6万台くらいしか売れない小さな市場でした。

また、その当時のアメリカでは「イージー・ライダー」という映画の影響もあり、オートバイは、革ジャンを着て街で暴れる暴走族の遊び道具という悪いイメージも定着していました。

普通なら、こういった社会的イメージが悪い小さな市場に参入しませんが、ホンダは当時、オートバイの年間販売台数が国内だけで50万台と驚異的な売り上げを記録していたこともあり、余程、自信があったのでしょう。

500ccクラスの大型オートバイが主流のアメリカのオートバイ市場に、ホンダは、250ccクラスの中型オートバイを主軸に据えて参入したのです。

しかし、やはり、ピザ専門店で言えば、3000円の豪華なピザが主流の市場で、品質の悪い1500円のピザで市場競争するのですから、当然、成功するはずもなく、ホンダは、アメリカのディーラー達に月間1万2千台売ると豪語しましたが、初月に売れたのは、わずか8台、初年度も年間で170台しか売れないという惨憺たる結果を招いたのでした。

そんな中、当時のアメリカのホンダでは、社員は小さなスクーターに乗って街中を移動していましたが、ホンダにとって全くもって予想もしていなかった、この社員が乗っている小さなスクーターが多くの人の目に留まって話題となり、市場関係者から注目されるようになりました。

そして、その話に興味を持った企業からホンダに問い合わせが来るようになり、ホンダの社員が乗っている小さなスクーターを見に来たディーラー達は、まるで口を揃えたかのように「なんて、キュートなオートバイなんだ!」と言って、感動するのでした。

つまり、ホンダが予想もしていなかった社員が乗っている小さなスクーターが潜在的な顧客のハートを鷲掴みにして、アメリカのオートバイ市場のハートシェアを独占してしまったのです。

その後、ホンダは、アメリカのオートバイ市場の歴史を変える爆発的なサクセスストーリーを生みます。 



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