2014年12月22日月曜日

スモールビジネスは、なぜ、成功しないのか? (72)

まとめ(10)「売り上げを伸ばす方法」(3)
顧客が買うのは、「ニーズ」でなく「ウォンツ」
 

 


こんばんは。今回は新規顧客の開拓について見て行こうと思います。

既存市場で売り上げを伸ばすために既存客、ロストした顧客にアプローチした次は、新規顧客にアプローチしますが、新規顧客にアプローチする時に特に意識しなくてはならないのが、顧客が買うものは、「ニーズ」でなく、「ウォンツ」だということです。

ところで、既存市場にいる新規顧客とは、競合他社の顧客ですから、現行の取引先に不満がないのなら、わざわざ取引先を増やしたり、代えたりする理由はありません。

しかし、市場は常に変化するため、いづれ、その変化について行けずに脱落する企業が現れ、その代役が必要になる時が来ます。

その時が新規顧客にアプローチする絶好のタイミングですが、なかなかそういった市場の大きなトレンドの転換点に乗って新規顧客を開拓するのは難しいものです。

ところが、そういった市場の大きな変化とは別に、市場では、一つの普遍の法則とでも言える、人の購買行動が存在します。

それが、人の購買行動は、感情的論理に沿って行われるということです。

感情的論理は、以前、お伝えしましたが、初めて聞く方もいらっしゃると思いますので簡単に説明しますと、要は、顧客が買うものは、「ニーズ」でなく、「ウォンツ」で、人の購買行動は、「欲しい!(ウォンツ)、だって・・・、必要だから(ニーズ)」といった感情の流れに沿って行われるということです。

ですから、人は、「欲しい!」という感情が起きない物は買わないし、欲しくても、「なぜ、必要なのか?」という理由が見つからない物も買わないのです。

また、購買の意思決定は、「欲しい」という感情が「お金を失う恐怖」よりも強い感情になった時、人は、購買の意思決定をします。

たとえば、会社の将来を考えると、どうしても欲しい設備があるが、費用が高額なため、半分あきらめていた。

ところが、ある日、その設備を使った仕事の引き合いが来て、調べてみると、その仕事を受注すれば、短期間で設備に必要な費用を回収できることが判ったとすれば、「お金を失う恐怖」が緩和され、設備投資の意思決定につながります。

あるいは、個人でも、学生の頃、「欲しくてたまらないけど、とても高くて買えないと思っていた物」があったが、社会人になって収入が安定して来たころ、偶然、今なら手の届く金額で、しかも現品限りで売られていたので、思わず衝動買いしてしまった。

誰にでも、このような経験があると思いますが、このように、人は、「欲しい」という感情が「お金を失う恐怖」よりも強い感情になった時、購買の意思決定をします。

以前、ある歯科医院で、こんなことがありました。その歯科医院の歯医者さんは、明るいお人柄で、治療の腕も良く、いつもテキパキと治療するのですが、何故か、その歯科医院は、流行っていないようでした。

最初は、駅前に7件も歯科医院があるので、きっと、競争が激しくて、顧客の奪い合いになっているのかな? と、思いました。

ところが、何回か通院していると、ある時から、その理由がはっきりと判りました。

ある患者さんは、「先生、虫歯が治ってありがたいのですが、この継ぎはぎだらけに見える歯は、何とかなりませんか?」

また、ある患者さんは、「先生に治療して頂いて、食べやすくなったのですが、歯が3本斜めにそろって見えるのはカッコ悪いのですが・・・。」

こんな、患者さんとのやり取りを耳にするようになりました。

私たちは、歯を治療するために何度も同じ歯科医院に根気強く通院しますが、確かに治療は、「必要なこと」ですが、だからと言って、継ぎはぎだらけの歯や斜めに揃った歯が欲しいのではありません。

本当に欲しい物は、「綺麗な歯」なのです。

また、この逆に「安かろう、悪かろう」と言われるように、「欲しいことは満たすが、必要なことは満たさない」といったこともあります。

さすがに、「安かろう、悪かろう」は、顧客を騙すようなもので、論外です。

会社の計画的な成長を望むなら、「必要なこと」を完璧に満たすのは、あたりまえの話で、それだけでは、顧客は増えるどころか、水漏れするバケツのように流出していくのです。

会社を存続させるためには、最低でも1つは、顧客が「欲しい物」は何かを見極めて実行しなければなりません。

そして、新たに新規顧客を増やしたいのであれば、今後、顧客の「ウォンツ」をどの程度拡げて満たせるかが成功のカギを握るのです。