2014年4月23日水曜日

ピーター.F.ドラッカー  2014年からの予見(2/2)

ピーター.F.ドラッカー
2014年からの予見/2)


ドラッカーは、今後、グローバル化した「情報」によって世界は強固に結びつく時代が到来し、それは、まだ、誰も理解していない世界であり、この2005年以降の30年間は、非常に苦難で、苦しい時期を過ごすことになると予見しました。

そして、30年間の混迷した世界の中で、重要な役割を担う国が2国あり、一つはイギリス、そして、もう一つは、日本であり、イギリスは、ヨーロッパとアメリカを、日本はアメリカとアジアの舵取りをする責任があると主張しています。

グローバル化した「情報」は、既に世界に二つの大きな変化をもたらしています。

二つの変化とは、「保守主義」と「労働市場」の変化です。

たとえば、アメリカでは、2002年の3月に自国の鉄鋼業を保護する目的で鋼材の輸入に関税をかけましたが、グローバル化した「情報」によって世界規模で鋼材の最安値の相手が瞬時に見つかるため、同年の12月には余儀なく関税を撤廃しました。

保守の前提には情報の遮断が必須ですが、もはや、情報の遮断は不可能です。

つまり、グローバル化した情報、情報(透明性)によって行われる革命は、「保守主義」をイノベーションさせることを意味しています。

同様に、グローバル化した情報は、「労働市場」にも大きな変化をもたらします。

いままで、労働市場は、製造を主体とした企業が規模の経済性を活かして、製造コストを下げることで成長を遂げていました。つまり、「単純労働(肉体労働)」の「効率」が企業成長のカギを握っていました。

しかし、現在は、市場に製品は行き渡り、製品価格の優位性よりも、製品価値が市場の主導権を握るようになると、企業は効率よりも「効果」が重要になりました。

その結果、労働市場は、「単純労働(肉体労働)」から、「知識労働」へと需要の中心が変化し、効率よりも「効果」を求めるようになりました。

かつての日本企業は、様々な国にできるだけ多くの資産を「保有」する(規模を広げる)ことを重視し、いかに資産を増やすかに狂奔していました。

しかし、現在、最重要視すべきことは、規模を広げることではなく、効果であり、企業においては「戦略」が、企業の将来の鍵を握るようになりました。

いかに効果的に経営できるか戦略を練り、研究・開発をコントロールしていくかに知恵を絞る「知識労働」が企業の中核をなすようになりました。

事業計画を立案し、事業の設計やデザインを考え、マーケティングや研究開発に知恵を絞ること、そして、自ら手がける必要のないものを選別して、アウトソーシングすること、すなわち「戦略」を管理する経営構造の確立こそ知識労働時代の最も重要な課題となっています。

また、知識労働者が、その質を高めるには、知識労働者がチームを組むことが必要となります。

経営者は、多数の知識労働者をチームとしてまとめ、高度に細分化された専門知識を統合して機能させるために、彼らを管理・監督する能力が求められます。すなわち、経営者は、知識労働者の目となり、耳となり、口となることができる能力が必要となりました。

このように、知識社会においては、「知識を生産的にすること」が競争を可能にするただ一つの方法です。アメリカは、この方法を推し進めることにおいて、世界に一歩先んじてきましたが、その優位性はそう長く続かないと推測されています。

そして、その代役を担うが如く、その「知識を生産的にすること」で、世界のリーダーとなるのが日本であると期待されています。

しかし、現在の日本は、情報技術(知識を生産的にすること)の分野において、ひいては、「情報を基盤とした経済」への移行にひどく立ち遅れています。

東洋にいながら西洋の一部になり得たことが、日本を成功に導いた最大の要因ですが、その結果、日本は、非常にハイコストな国になってしまいました。

ハイコストな日本が生きていくためには、イノベーションと、イノベーションによって生み出される新たな価値を輸出し続けていくことが必要です。

そして、日本は、この情報技術の分野でイノベーションする術を学び、「情報を基盤とした経済」でリーダーとなることが日本が生き残る道ではないかとドラッカーは予見し、ドラッカーが日本へ送った遺言となりました。