2014年4月29日火曜日

スモールビジネスは、なぜ、成功しないのか?(10) 職人タイプの経営者の「青年期」マネージャーの時代(1) 「幼年期への回帰」マイケル・E・ガーバーより

スモールビジネスは、
なぜ、成功しないのか?(10)
職人タイプの経営者の「青年期」
マネージャーの時代(1)「幼年期への回帰」
マイケル・E・ガーバーより



スモールビジネスの職人タイプの経営者は、自分と数人のアルバイトでは仕事がこなせなくなると、自分ができないか、やりたくない仕事をしてくれる専門職の職人を雇う。

その職人が、スモールビジネスを知り尽くした生粋のベテラン経理職人、ハリーだ。

そして、ハリーを雇うことで、できないか、やりたくない仕事をハリーに押し付け、仕事と責任を放棄することで、「幼年期」の初期の段階と同じ、自分がやりたい仕事だけをしようとする。

スモールビジネスの職人タイプの経営者が、この行動を始めると、すぐに会社は大混乱に陥り、倒産の危機を向かえる。

なぜなら、あなたのお客さんは、もうすでに、幼年期の商品やサービスは求めていないのだ。新たな、わくわくするような製品をあなたの会社に期待しているのだ。

ところが、スモールビジネスの職人タイプの経営者は、自分がやりたいことしかしないため、この重要な変化に気づけないのだ。

事業が混乱し始めると、たいていの職人タイプの経営者は「事業を縮小する」ことで、問題を解決できると信じる。

職人という性格を考えれば、予想通りの意思決定だといえるだろう。

なぜなら、職人タイプの経営者にとっては、事業を縮小することが、混乱から抜け出すのに最も簡単な方法なのである。

全ての仕事を自分でやってしまえば、従業員に気を使う必要もなくなる。要するに、事業が最も単純だった幼年期に戻ろうと考えるのだ。

そうしなければ、増える一方のお客さんに対応しきれないばかりか、借金も在庫も増えるばかりだと思う。

これまでにも数えきれないほどの職人タイプの経営者たちが、この意思決定を行ってきた。従業員をクビにし、在庫を処分し、小さな事務所に引越し、全ての仕事を自分自身でこなそうとする。

こうして、職人タイプの経営者は、オーナー兼経営者兼シェフ兼皿洗い兼デリバリー兼・・・ となり、全てを思い通りにできると信じるのだ。

「やっぱり、これがいいじゃないか!」と、職人タイプの経営者は、「幼児期」の頃の会社の悩みを忘れて、この状態に満足しようとするため、古くからのお客さんには見放され、もう一度、新規のお客さん探しから始めなくてはならなくなる。

そして、新たに獲得した新規のお客さんだけを満足させるために、もう一度、大道芸人のような才能を発揮しようと孤軍奮闘する。

ところが、ある朝、ベッドで目覚めると、伴侶が「どうしたの? 何か調子が悪そうだけど」と心配そうな表情を見せる。

「あんまり調子がよくないんだ」

「どうして?」と、聞かれて、こう答える。

「簡単なことさ。もう、仕事をしたくないんだ!」

そして、伴侶から分かりきった答えが返ってくる。「あなたがやらなかったら、誰がやるの?」

こうして、厳しい現実から逃げられないことに気づかされる。

この時、初めて、職人タイプの経営者は、会社を経営しているのではなくて、仕事を大量に抱え込んでいるにすぎないという現実に気づくのである。

これは、最悪の状態ではないだろうか?

事業をやめたいと思っても、生活の糧を担う手段がなくなってしまうので、事業をやめることができない。

休みたいと思っても、代わりがいないので、休むこともできない。かといって、事業を売ろうとしても誰も買ってくれない。

こうやって、スモールビジネスの職人タイプの経営者は、悲哀を感じることになる。ささやかな夢が消えたのと同時に、働く意欲も消えてしまう。

もう、何もやる気が起きない。会社にやってくるお客さんは、いろいろと注文をつけたがる面倒な人たちにしか見えないし、普段、仕事で着る服にも無頓着になる。

このようにして夢は失われ、山のような仕事だけが残ってしまう。

そして、職人のプライドからも、この山のように残った仕事を必死になってこなしていく。

その作業は、もう、決して仕事とは言い難い状況だ。単純労働以外の何者でもない。

何も創造的なことがなく、つまらない単調でつらい作業の繰り返しだ。

それは、まるで、ベルトコンベアーで流れてくる自動車を組み立てるための部品だけを取り付ける機械がするような作業で、肉体的にも精神的にも、毎日が限界を超えるものである。

そして、この繰り返しに耐え切れなくなった時、ついに看板を下ろすことを決意する。

もう、心残りに思うことなど、何もない!

これは、最もなことだ。スモールビジネスの職人タイプの経営者にとって、起業とは人生の希望だった。

しかし、今や希望は失われ、叶わない夢の墓場となってしまった。

このようにして、アメリカでは、毎年、40万件以上の企業が廃業しているのである。

ご質問・お問い合わせ:質問・お問い合わせフォーム
公式ウエッブサイト:創造的マーケティング戦略



マーケティング・経営 ブログランキングへ