2012年2月28日火曜日

創造的マーケティング戦略「エネルギーの時代」に向けたイノベーションの成功事例

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「エネルギーの時代」に向けたイノベーションの成功事例
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 今回は、2012年から始まった新しいトレンド「エネルギーの時代」に向けて、企業はどのようなイノベーションをすればよいのか、既にイノベーションしている企業の成功事例にフォーカスします。

ご存じかも知れませんが、東京都板橋区に本社を構えるナカバヤシ株式会社は、水で発電する水電池NOPOPOという商品名の燃料電池を販売しています。

水電池NOPOPO


ナカバヤシ株式会社
https://www.nakabayashi.co.jp/product/new/item.html?mode=view&product_id=164&gt

このナカバヤシ株式会社は、もともと製本業からスタートした企業で、失礼な言い方になってしまいますが、その業界イメージからすると、燃料電池のような新時代の最先端の製品とは全く無縁な企業でした。

ところが、同社の沿革を見ればわかりますが、これまでの事業の経緯は、業界分野を大きく分類して、その経緯を見ると、

1 製本業(印刷業界)
2 印刷業界
3 印刷業界、事務製品・機器業界
4 印刷業界、事務製品・機器業界、エネルギー資源業界

この4ステップの順番で事業領域を拡大しています。

そして、この経緯を「アンゾフの製品/市場成長(拡大)グリッド」に照らし合わせると、

1 市場浸透戦略 製本業
2 市場開拓戦略 印刷業界
3 製品開発戦略 事務製品・機器業界
4 多角化戦略  エネルギー資源業界

となり、まるでマーケティングの教科書に沿って成功したかのように、ものの見事に、アンゾフの成長戦略に当てはまっているのです。(アンゾフの成長戦略については、文末のマーケティングの豆知識を参照してください。)

つまり、ナカバヤシ株式会社の成長戦略のロードマップは、1→2→3→4と、ロードマップが進むにつれて、自然な形で関連業界同士が無理なく融合していき、そのことで自社がカバーするマーケットも自然に拡張しています。

こういったことを何も知らない人からすれば、ナカバヤシ株式会社が燃料電池を販売すると、

「何で製本屋さんが燃料電池を売るの?」、
「何で文房具屋さんが燃料電池を売るの?」、
「何で・・・」
                  ・
                  ・
                  ・


と、なるのでしょうが、戦略とはこのようなもので、知らない人からすれば全く理解できないのです。

つまり、この事例からもわかりますが、成功する成長戦略(イノベーション)とは、

1 既存市場での拡販
2 既存業界での拡販
3 既存業界+関連業界での拡販
4 既存業界+関連業界+「エネルギー業界」への参入

となるようなロードマップを描き、この1~4の順番に沿ってロードマップが進むにつれて、同心円状に輪が広がって行くようなイメージで自社がカバーするマーケットも拡張して行くのです。

そして、その戦略によって「エネルギー業界」への参入ができるような製品を開発するか見つけることで事業機会を創出することが、新しい時代で成功するためのキーワードとなるのではないでしょうか。

★★★★★★★ マーケティング豆知識 ★★★★★★★
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「アンゾフの製品/市場成長(拡大)グリッド」とは
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「アンゾフの製品/市場成長(拡大)グリッド」とは、成長戦略を策定する時の思考ツールです。この思考ツールでは、まず、企業の成長を3段階に分けて、

 1 集中的成長
 2 統合的成長
 3 多角的成長

この1~3の順番で企業を成長させる戦略を策定し、実行します。

 1の集中的成長とは、既存市場での成長。
 2の統合的成長とは、関連市場での成長。
 3の多角的成長とは、現在の事業とは関係のない市場での成長。

この1~3の成長戦略の策定と実行は、下図のような製品(既存、新製品)と市場(既存、新市場)の4つの項目でできた表を作り、表内の4つの戦略を1~4の順番で策定して実行することで完成します。


1の市場浸透戦略とは、既存市場でシェアを伸ばす戦略
2の市場開拓戦略とは、既存製品のための新市場の発見や開拓をする戦略
3の製品開発戦略とは、既存市場でシェアを伸ばすことができそうな潜在的に関心のある新商品を開発する戦略
4の多角化戦略とは、新たな成長が見込まれる新市場の新商品を開発する戦略

今回のナカバヤシ株式会社の事例で言えば、

1 製本業で売り上げを伸ばす。
2 製本業は印刷業界なので、印刷業界全体で売り上げを伸ばす。
3 2の製造ラインを活用して事務用品や機器を開発して既存の事務用品の業界に拡販を図る。
4 3での成功をもとに燃料電池を開発して新たなトレンドが発生している市場に参入する。

と、なります。