2014年4月25日金曜日

スモールビジネスは、なぜ、成功しないのか?(5) 「優れた経営者の3つの人格」 マイケル・E・ガーバーより

スモールビジネスは、なぜ、成功しないのか?(5)
「優れた経営者の3つの人格」

マイケル・E・ガーバーより




優れた経営者は、「起業家」、「マネージャー」、「職人」の3つの人格をあわせ持っている。

そして、この3つの人格のバランスが取れた時に驚くような能力を発揮するのである。

「起業家」は、新しい世界を切り開こうとし、「マネージャー」は、事業の基礎を固めてくれる。そして、「職人」は、専門分野で力を発揮してくれる。

それぞれの人格が最高の仕事をすることで、全体として最高の結果を出せるのである。

しかし、残念なことに、私の経験から言えば、起業した人の中で三つの人格をバランスよく備えている人は、ほとんどいない。

それどころか、典型的なスモールビジネスの経営者は、10%が起業家タイプで、20%がマネージャータイプで、70%が職人タイプである。

そして、スモールビジネスの現実は、この3つの人格のうち、「起業家」は、高い目標を揚げ、それを知った「マネージャー」は、起業家の暴走を引きとめようとする。この2つの人格が争いだすと、いつのまにか「職人」が会社の主導権を握るのである。

職人が会社の主導権をとる目的は、会社の目標を実現するためではない。

職人の目的は、他の2つの人格から主導権を奪い、自分がやりたいことだけに集中するためだ。

職人は、必要なことをするのではなく、やりたいことをする。職人は、そもそも、会社と遊び場の区別がないのだ。

職人にとって、会社とは、働く場所ではなく、自分が好きなことをするための手ごろな場所にすぎないのである。

だから、職人にとって、会社で自分が主導権を握っていることは理想なのだ。

しかし、事業全体から見れば、それは、最悪の結果を招く。なぜなら、間違った人物が主導権を握っているからである。

会社は、決して、職人に主導権を握らせてはならないのだ!

では、スモールビジネスをよく理解するためにも、それぞれの人格の違いを見てみよう。


「起業家」の人格

起業家とは、将来のビジョンを持ち、周囲の人達を巻き込みながら、変化を引き起こす人物である。

そして、起業家は、未来に住む人でもある。決して、過去や現在にとらわれることはない。「次に何が起きるのだろう?」、「どうすれば実現できるのだろう?」と、いった問題を考える時に幸福を感じる。

起業家は革新者であり、偉大な戦略家である。そして、新しい市場を創り出すための方法を発明する。

起業家の人格とは、私たちの中の創造的な部分である。

未知の分野への取り組み、時代を先取りした行動、わずかな可能性への挑戦、こんな無理難題に対して最高の能力を発揮する。

しかし、起業家は新しいことに取り組むことは得意でも、きっちりと「管理」することが苦手だ。

起業家は、いわば空想の世界に住む人なので、現実社会の出来事や対人関係は、誰かのサポートが必要になる。

起業家は、周りの人を置き去りにしたまま、いつのまにか自分の世界に入り込む。しかし、一緒に仕事をする以上、周りの人を置き去りにするわけにはいかない。自分と同じレベルまで引き上げなければならないのだ。


「マネージャー」の人格

マネージャーとは、管理が得意な実務家である。マネージャーがいなければ、計画さえ立てられずに、会社はたちまち大混乱に陥る。

起業家が未来に生きる人格なら、マネージャーは過去に生きる人格だ。起業家は変化を好むが、マネージャーは変化を嫌う。

目の前の出来事に対しても、起業家はチャンスを探すが、マネージャーは問題点を探す。

マネージャーは家を建てれば、その家に住み続けようとするが、起業家は、家を建てると、直ぐに次の家を建てる計画を始める。

つまり、マネージャーがいなければ事業も社会も成り立たないが、起業家がいなければ、革新も起こらない。

このように、マネージャーと起業家は、水と油の関係だが、この二つの人格を協力させることができれば、事業は、大きな成功を生むのである。


「職人」の人格

職人は、自分で手を動かすことが大好きな人間である。「きちんとやりたければ、他人に任せず自分でやる」、これが職人の信条である。

職人にとって、仕事の目的は重要ではない。手を動かして、モノを作り、その結果として目的が達成されれば満足なのだ。

モノに触れて、作ることが大好きで、決められた手順に従って仕事をしている時に、幸せを感じるのである。

このように、職人は考えることが嫌いだ。そのため、難解な理論や抽象的な概念に対しては、仕事の邪魔にしかならず、「どうすればいいいか?」さえ判れば、十分なのである。

そして、スモールビジネスの経営者の多くが、この職人タイプなのである。

職人の仕事は、とても大切ではあるが、職人にとっては、起業家やマネージャーは、自分の邪魔をするだけの何者でもないという意識で見る。

本当なら、起業家が新しい仕事を考えて、職人がそれを実現させるという役割分担が成り立つのだが、実際は、職人は起業家の言うことをなかなか聞かない。

また、職人は、マネージャーが大嫌いだ。

なぜなら、マネージャーは、職人を管理し、仕事での個性を否定するからである。

マネージャーにとって、仕事とは、小さな結果を積み重ねたものであり、名人芸は必要ないのである。職人が、どんなに名人芸をしようとも、マネージャーにとって、その仕事は、単なる部品にしか過ぎない。

そして、このようなマネージャーの態度に、プライドの高い職人は我慢できないのである。

たいていの場合、職人とマネージャーの二人の意見は一致しない。

しかし、最大のトラブルの原因は、起業家が会社に持ち込む変化であるという嘘認において、二人とも同意するのである。

そして、優れた経営者は、この「起業家」、「マネージャー」、「職人」という合い交わらない三つの人格をバランスよく持ち合わせており、これらをバランスよく使って、驚くような成果を生むのだ。


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